医師にMBAは必要なのか?

医師がMBAを学ぶ意義はある

医師にMBAは必要なのでしょうか?よく周りの人に

「なんでMBAなんか通ってるの?」

「医師免許持ってれば余裕じゃないの?」

「お金目的の医療をしているの?」

などなど色々とストレートな疑問をぶつけられます。「医師にMBAは必要ない?」あるいは「医師がMBAを取るなんて、お金のことを考えるなんて邪道?」なのでしょうか?[read more=”続きを読む” less=”閉じる”]

「お金」という観点から見た医療

「お金」という観点から医療を眺めてみると、現在の医療業界の厳しい現状と将来の悲観的な見通しが明らかになってきます。

上のグラフは厚生労働省の国民医療費の動向(平成29年度)からの抜粋です。

既にご存じの方も多いと思いますが、医療費は右肩上がりに上がり続けています。平成29年度の統計では国民医療費は42兆円となっています。その理由は上のグラフの下の部分(黄色やオレンジのところ)、つまり高齢者の増加に原因があるとされています。

「でも医療費が上がっているということは病院がどんどん儲かるんじゃないの?病院にとっては願ったりかなったりでしょう?」

という声が聞こえてきそうですが、そうは問屋が卸しません。

医療費は国民皆保険制度を維持するために国からの税金が大量に投入されています。国民から徴収した保険料だけでは間に合わないからです。この先同じペースで増え続ければ間違いなくパンクして国民皆保険制度は崩壊するでしょう。

そこで、国は方針転換をしました。医療費の総額を抑えることに決めたのです。

2025年には団塊の世代が75歳を超えて後期高齢者が大量に増えて、3人に1人が65歳以上になるということが分かっています。医療費の伸びが加速する要素がまだまだあるのです。

現在医療機関が治療などの医療行為を行った際にもらえる診療報酬は値下げ圧力が高まっています。2014年度には在宅医療の報酬がいきなり4分の1に引き下げられ潰れた医療機関もたくさんありました。

現在も赤字に転落しているクリニックや病院はたくさんあり、病院間のM&Aが活発化しています。経営に行き詰った病院やクリニックが身売りをしているのです。今後この傾向はますます強まると予測しています。ですから、医師も経営をある程度理解する必要があるのです。

医学部では「お金」の話は教えない

医療経営が厳しさを増す中、現場の医師たちも悲壮感が漂っているのかと思いきや・・・そんなことはありません。

なぜなら「あまり深刻に受け止めていない」または「気づいていない」のです。院長などの経営者であればともかく、現場の勤務医達はそのような事実にほとんど気づいていないか、深刻に受け止めていないと思われます。

医療の世界ではもともと「お金の話をすることはタブー」という雰囲気がありました。患者の命を救うことが唯一最大の至上命題であり、お金のことをゴチャゴチャ言ってはいけないという雰囲気です。

もちろん患者の命を救うことが医療関係者にとって何よりも大事なのは当たり前なのですが、あまりにも視野が狭くなっているため

「いかに低コストで救うか」

「いかに効率的に治療効果を上げるか」

といった視点が見落とされてきたように感じますし、効率という観点から普段の診療行為を評価する仕組みもありません。

良い医療も利益がでなければ続けられない

日本の医療はこれまで世界トップレベルの水準を誇ってきました。また、国民皆保険という国民に平等な医療を提供する制度を維持し健康水準を維持してきました。日本が世界の中でも平均寿命が長いのはこうした要因があるかもしれません。

しかし、その制度の維持が難しくなってきたのです。当たり前の話ですが、利益が出ないと従業員への給与の支払いや新しい技術への投資もできなくなってしまいます。

私はよい医療を維持するには良い人材が不可欠と考えています。良い人材に報いるための手段のひとつが給与である以上は、ある程度の利益を確保して従業員に還元することができなくなると、従業員のモチベーション低下を招き結果的に医療の質の低下につながると思います。したがって、厳しい医療環境の中でも利益を確保することは良い医療を実現するためには必要なのです。

人口減少による競争激化

日本の人口は減少に転じています。かつてのように普通にやっていれば人口(患者)が増えて経営が上手くいくというような時代は終わりました。2050年には日本の人口は1億人を下回るといわれています。マーケットが縮小していくのです。おそらくこれからさらに多くの医療機関が整理・統合されていくでしょう。

まとめ

いかがでしょうか?このような厳しい時代だからこそ医師も生き抜くため理想の医療を実現するための拠り所のひとつとしてMBAを取得メリットはあると思います。MBAでは厳しいビジネスの世界で見出されてきたビジネスの知恵が学べますからね。

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投稿者: Dr.ひろ

内科医として大学病院、地域中核病院、小規模クリニック、在宅医療、自由診療と様々な医療を経験。大学病院時代は基礎研究にも従事。現在はフリーの内科医として都内で診療にあたる。 みなさんが健康を意識し維持できるように、医療・健康に関わる情報を解りやすく身近なものとして提供したいと考えています。そのための手助けになれれば嬉しいです。/ 医師(日本内科学会認定内科医、日本血液学会血液専門医)/ 医学博士(内科学, 東京大学)/ MBA(経営管理学修士, 名古屋商科大学)/ 産業医/ 合同会社スケールフリー代表社員